台湾の連盟・政党と第10回立法委員選挙 3

台湾の選挙運動はいよいよ追い込みに入ってきた。2019年11月22日、立法委員選挙の立候補受付が締め切られた。台湾の中央選挙委員会の発表によれば、選挙区の立候補者は412人、原住民選出枠では平地原住民の立候補者は10人、山地原住民の立候補者は11人、政党名投票による比例および外国居住者枠で217人が登記された。

台湾には民主進歩党 (民進党)中国国民党 (国民党)時代力量親民党新党緑党台湾団結連盟といった名前がよく知られている政党のほかにも、安定力量国会政党連盟一辺一国行動党中華統一促進党台湾革命党喜楽島連盟など、ミニ政党が数多く存在しているほか、無所属立候補者もいる。

ミニ政党は多くあるが、実際には民進党と国民党の一騎打ち状態であり、そこに親民党、時代力量が食い込んでくるイメージだ。前回2016年の第9回立法委員選挙では民進党が大躍進し、113議席中68議席と28議席増で過半数の議席を獲得。対する国民党は29議席減の35議席となり、総統選、立法委員選、どちらも大敗した。このほか、時代力量が5議席、親民党が3議席、無党団結連盟が1議席だった。

時代力量は前回、大躍進した政党だった。2014年、国民党政権は中華人民共和国に対して、サービス分野市場を開放する「海峡両岸サービス貿易協定」の批准を目指していたが、台湾の中小企業のビジネスに大きなダメージを与えるほか、政治的にも問題があると、台湾の学生がデモを行い、最終的には議会に突入して占拠し、国民党による強行採決にストップをかけ、協定の発効中断に追い込んだ。この時の活動した学生が中心となってできたのが時代力量という政党である。

しかし、同党が総統選挙で蔡英文現総統の続投を支持するかどうかといった意思をはっきりさせなかったことなどを要因に、結党時の中心人物の一人であった台北市第5選挙区選出の林昶佐委員 (ロックバンド「閃靈=ソニック」のボーカリストとしても有名) 、2013年台湾陸軍内で起きた暴力を伴うパワーハラスメントが原因で発生した下士官の死亡事件で犠牲者となった洪仲丘氏の姉であり、台中市第3選挙区から選出されている洪慈庸委員が離党。こういった背景から時代力量は今回の選挙では苦戦が予想される。

一方、時代力量から離党した林昶佐委員と洪慈庸委員は無所属で前回同様の選挙区から立候補。早くから蔡英文現総統の再選支持を表明しており、民進党は両選挙区に独自の候補者を立てず、この2人と選挙協力を行う。

KP
今回は柯文哲台北市長が率いる台湾民衆党が台風の目となるか?

比例選挙で話題となったのは国民党、および親民党が届け出た名簿と名簿の記載順位だった。国民党が名簿順位2位とした葉毓蘭・元警察大学教授は香港における反中デモを行う学生・市民を暴徒として非難し、物議を醸した。しかし、一番問題とされたのが名簿順位の4位に入れた退役軍人の呉斯懐元陸軍副司令官である。呉氏は2016年、北京で開催された孫文生誕150周年式典に参列し、中華人民共和国国歌を斉唱しただけでなく、習近平国家主席の祝辞の際に起立し、敬礼するといった行動が報道され、台湾国防部は不適切であるとし、問題になった人物だ。名簿4位は国民党において、当選確実なラインであり、台湾の軍事機密などを外部、中国に漏らす可能性がある人物にすることに対して、党内外から批判がでている。

 

1113分国民党
国民党が当初発表した比例代表名簿は党内からの非難が多く、届け出時に一部変更があった

台湾の政治討論番組では呉斯懐氏を含め、今回の国民党の立候補者が統一派や親中派の年寄りばかりであり、仮に国民党が20議席以上獲得した場合、立法院の各委員会の委員長に親中派や統一派が就任する事態も起こりうる、中国に台湾の機密や戦略などが漏れる恐れがある、として、危機感を訴える政治評論家もいる。

呉元中将
北京で行われた孫文生誕150周年記念大会への参加が批判された呉斯懐氏

親民党で注目されたの今回の総統選からは撤退した鴻海 (ホンハイ) グループ創業者の郭台銘氏関連の人物が2人、入っていたことだ。名簿3位の宣明智氏は半導体製造会社UMCの元会長で、郭台銘氏とは懇意の仲にある。9位の劉宥彤氏は郭台銘氏が設立した慈善団体、永齡基金会グループの一つ、永齡教育基金会の執行長 (事実上のトップ) である。郭台銘氏関連の候補者は今回の選挙で台風の目になるといわれる台湾民衆党の名簿にも入っている。名簿3位の高虹安氏は永齡教育基金会の顧問であり、ホンハイグループの社員だ

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総統選からは撤退したが、今後の動向が注目される郭台銘

郭台銘氏は総統選からの撤退宣言をした後も各地で支援お礼の会を開催したり、テレビコマーシャルを打つなど、PRを展開している。今回は親民党と台湾民衆党から出馬する家軍 (郭台氏が支援するグループ) を個人的に支援していくようだ。

立法委員選挙まで、残り1ヶ月半となり、台湾の各党、立候補者は選挙対策本部を構え、選挙区民に支援を呼びかける日々が続く。

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